2004年9月12日日曜日

合唱のPAを考える

合唱が他の音楽に比べて、圧倒的に不利なのは音量が小さいという点だと思います。
合唱団にいれば、ちょっとした機会に、ホール以外で歌うこともあることでしょう。大人数で歌うならそれほど気にならないかもしれませんが、屋外とか、全く響きのない空間だとか、ざわついたオープンスペースだとか、そういう場所で音楽をやる場合、やはり音量の小ささはマイナス要因になると感じてしまいます。
合唱というジャンル自体一般的でない日本において、こういった理想的な環境ではない場合でも、平気で演奏を頼まれるし、歌う側も演奏環境にはあまり気には留めませんが、どうせホール以外の場で歌うのなら、もう少しまともな環境を自分たちで作ってしまいたいものです。

こういった場合、マイクで音を拾ってスピーカーで出す、いわゆるPAをもっと活用すべきではないかと思います。
クラシックなのだから、マイクで拡声したくない、という意見もあるでしょうが、それならばそもそも劣悪な音環境の中で歌うこと自体、拒否すべきです。いろいろな場所で歌って、合唱の、歌の魅力を知ってもらいたいと思うならば、それを最大限聞かせる努力をやはりするべきではないでしょうか。
そういう意味で、PAは生音楽にとって少しも悪いことではないし、むしろ生音楽の魅力をきちんと音響に反映できるようなPAのテクニックというものがもっと研究されたらいいのにと思っています。
PA屋さんも、合唱の知識はないので、たまにPAを使って演奏するときなども、なかなか思い通りのセッティングをしてくれないのが現状です。だから、合唱とPAの技術、両方に長けた人が合唱における理想のPAというのを考えて欲しいなあ、などと思っています。

私自身、あまりPAに詳しいわけではありませんが、以下、自分の知っている範囲で、合唱におけるPAというのを考えてみましょう。
最大の問題は、スピーカーの位置、マイクの位置、モニタースピーカーの位置です。お客に聞かせるスピーカーの位置は、会場の形にもよるのでなんとも言えませんが、歌う側にとって問題なのはマイクの位置と、モニタースピーカーの位置。
そんなに立派なPAを期待するわけにもいかないので、実際にはステレオマイク一本とか、少し遠めにマイク二本立てるとかくらいが現実的なパターンでしょうが、会場の広さによってはあまり遠くにマイクが置けないかもしれません。マイクが近くなるほど、マイクに近い人の声がもろに入ってしまいます。後で演奏の録音など聞くと、○○さんと仲間たち、みたいな演奏になっていたなんてこともしばしば。
そうすると、特定の人の声がマイクでたくさん拾われないように、マイクは多くの人から等距離になるように、結果的には合唱団から少し離すような位置がベターでしょう。それから、指向性の高いマイクを使わないという手もあるかもしれません。
合唱団に対するモニタースピーカーというのはどうしたらよいものでしょう。合唱団的な考えだと、後ろから声が聞こえてくることを好む人もいそうですが、一番後ろの人からさらに自分たちの声が聞こえてくるのは変だし、そもそもモニタースピーカーが前を向いていたら、その音自体をマイクが拾ってしまい、音響設定が難しくなってしまいます。最悪ハウリングも起こるかもしれません。
となると、前かあるいは横からモニタースピーカの音が流れるというのが良いでしょう。また、合唱の場合、モニタースピーカの音は、自分たちの声の確認というより、ホールで歌っているような気分、という要素もあるかもしれません。そうなると、直接音よりもリバーブ成分を大めにしてやったほうが良いような気がします。いたずらに人の声の直接音が聞こえると、もっと自分も出さなければいけないような気分になり、一人一人が大きめに声を出してしまう危険性もあるでしょう。
ミキサーのセッティング自体は、それほどやることはないと思います。ただ、良質なリバーブ(残響)が得られるようなエフェクタは欲しいところです。

マイク二本(あるいはステレオマイク一本)、モニタースピーカ二つ、メインスピーカ二つ、あとミキサーがあればちょっとしたPAは出来るはずです。とは言え、合唱団でこういう機材を揃えるのはちょっと金銭的に大変です。ミキサーなどは最近安いものも多くなってきましたが、PA用スピーカはちょっと値がはってしまいます。

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