先週もプロ合唱団について書きましたが、今日は本物のプロ合唱団、東京混声合唱団の掛川公演に行ってきました。
県内の合唱愛好家が集うかと思いきや、観客のほとんどは妙齢の女性ばかり。しかも、よく見てみたらそういう観客層をとても意識した選曲になっているわけです。地元の合唱団と合同ステージもあり、典型的な地方巡業コンサートでありました。
東京に住んでいれば、東京混声合唱団の意欲的な選曲の数々を聞くこともできるのでしょうが、なかなか地方に住んでいると、こういったあからさまな地方巡業公演くらいしか耳にできないのが悲しいところ。それでも、そういうスタイルの中で、最大限お客様に楽しんでもらえることを配慮した、別の意味でのプロらしさを感じた演奏会でもありました。
やっぱりプロ合唱団は声が違う。当たり前ですが。
どんなに素人が一生懸命練習したって、素材が違っているのだから仕方ありません。一人一人がまず圧倒的な声楽的素質を持っています。それに、一頃の東混のイメージと違って、発声もくせがなくパート内の音色もよく揃っています。こういうのはやはり指揮者が、少しずつ指導していった成果なのかなと思えます。以前聞いたときより(かなり前ですが)団員も若い人が多く、それがアンサンブルの精度の高さに貢献しているように感じました。
唯一の東混らしい現代曲は「追分節考」。しかし、これもある意味、合唱を知らない人もいろいろな意味で楽しめる曲なんですね。
やっぱり自分のすぐ横で、バカでかい声で歌われたら、そりゃ面白いですって。音楽自体もいつ何が起こるか分からない緊迫感がある。何かあると、聴衆がすぐそちらのほうを向いて、「あっ今度はあっち」みたいに囁きながら聞いているのをみると、これも中々良い選曲だなあと感じます。
ただ、私はこの曲、初めて聞いたのですが、想像の範囲を超えるほどスゴいとも思えなかったのが正直なところ。
例えば「俗楽旋律考」を朗読させる意味、というのは実演で伝えることが不可能です。今日もそこまでプログラムに書かれていなかったし、聞いている側としてはただ、わけわからん音響の素材でしかないわけです。そういうことで作曲家としてはいいのか私には疑問が残りますが、実際のところ、演奏する側がウケの良い前衛曲として重宝している以上の意味を感じられませんでした。
後は、愛唱曲といいながら、シェーファーのガムランがあったりするあたりは良いサービスです。「ヤコブの息子」あたりもこの手のレパとしては良いかもしれません。「島唄」のアレンジも東混ならではの演奏でなかなか映えていました。
それで、今回ほとんどのオバ様たちが何に満足して帰ったかというと、やはり指揮者、大谷氏の華麗なステージングだったと思います。うまいですよ、大谷さん、お客を笑わすのが。合唱指揮者というとマジメな感じがありますが、こういう軽薄な笑いが取れる指揮者というのは、プロ合唱団にとって必須だと思いました。下手な曲目解説よりも、きっちりとこれから演奏する曲の内容を伝えていたと思います。私は、シリアスぶる指揮者より、こういう洒脱さがあるほうが、結果的に音楽的にも奥行きのある演奏ができるのでは、と思っています。
演奏会自体は、プロを感じさせるなかなかのものでしたが、こういう団体がもっともっと一般的になるにはどうしたらよいのでしょう。
私のようなマニアは、もっと純粋な合唱曲を、しかもアカペラで、きっちり歌ってくれるような演奏会を期待してしまいますが、それだとやはり合唱マニアしか喜ばないのですよね。実際、定期演奏会ではそういったプログラムばかり歌っているわけで、東混のメンバーも地方巡業と定期演奏会のレパートリーの落差には気持ちの切り替えに苦労しているのではと思いますが、実際どうなんでしょう。
最近私は、編曲ステージでももっとオリジナリティのある、創造的なステージができると思っています。そういう方向性もプロには是非真剣にトライしてもらいたいのです。
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