プーランクのSalve Reginaについては以前も記事を書きましたが、まさか「その2」と題してもう一度書くことになるとは思ってもいませんでした。ちなみに、以前の記事はこちら。
さて、なぜ今回Salve Reginaのアナリーゼその2を書こうと思ったかというと、フレーズの最後に八分音符+八分休符、がある音形について分析してみたからです。
もともと、この点については以前より気にはなっていたものの、適当な解釈をすることで、あまり無理やり法則性を当てはめてしまうのも違うかなというような想いがありました。
その気持ちは今でも変わりませんが、実際にこの曲のパターンを一つ一つ吟味してみると、意外と分析可能なレベルの法則性を見つけることが出来たのです。これなら十分にアナリーゼの結果として紹介出来るのではないかと考えました。
では、解説してみましょう。
Salve Reginaの中で、フレーズの切れ目に八分音符+八分休符となるパターンが散見されますが、このパターンを以下の三つに類型化してみました。
1.連呼型
2.弱強型
3.フレーズ型
まず連呼型です。
これはいずれも繰り返しが二回現れるところで、全部で三カ所あります。一つ目は練習番号1の"Ad te clamamus"を二回連呼するところ。二つ目は練習番号6の"o clemens, o pia"と似た音形が二回現れるところ。三つ目は、最後のページの2段目"Maria"を二回連呼するところです。
繰り返し感を強調するために、一つのフレーズが八分音符で収められ、八分休符が付いている、と考えることができます。
従って、この繰り返し感を強調するような演奏が望まれるのではないでしょうか。
次は弱強型。
これはフレーズの音量が大きくなる直前が、八分音符+八分休符になるところです。
例えば練習番号2の"Ad te suspiramus, "の "-mus"のような箇所。この直後に音量はフォルテになります。他には、練習番号3の"Eja ergo" の "-go"も同様。それから、その3小節後の"misericordes" の"-des"など。
これらは、次のフレーズが突然大きくなるため、その前のフレーズを短めに切っておこうという感じがします。そうすることで、演奏者側も音量の切り替えが容易になるし、聴く側も明確な切れ目があることで、次の変化の予兆を感じやすくなります。
最後にフレーズ型。
これは、フレーズそのものが細切れで発想されているようなパターン。
具体的には、練習番号7以降、2小節ごとにフレーズが八分音符+八分休符で分断されます。プーランクの楽曲にはこのようなフレージングが多く現れ、それが独特のプーランク節を成しています。
これはフレーズそのものなので、具体的な演奏方法まで一般的なモノサシを当てはめることは難しいのですが、それでも厚ぼったいロマン派的な世界観と対比すると、音価を守ることでその歯切れ良さは明確に伝わってきます。
楽譜に現れる八分音符+八分休符のフレーズの切り方を、以上のような三つに分類してみました。
このような類型化を行なうことで、演奏家にとってフレージングの目的が明確になり、より的確な音楽解釈を行なうことが可能になるのではないでしょうか。
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