2012年1月4日水曜日

スティーブ・ジョブズⅠ、Ⅱ/ウォルター・アイザックソン

死去の直後に出版されたスティーブ・ジョブスの伝記本。あまりのタイミングの良さに商魂を感じないわけではありませんが、おかげで出版以来大変売れているようです。Appleファンである私も、もちろん購入しました。その後、なかなか時間が取れず、一巻をちびちび読んでいたのだけれど、大晦日と元日両日に読みまくり、一気に最後まで読んでしまいました。
本自体は相当な分量ですが、ついこの前まで当の本人が生きていたのだから、資料には事欠かない状況だったのでしょう。恐らくこれでも、相当情報を取捨選択したものと思われます。

読む前の私のジョブスの印象は、とんでもなく怖いカリスマで、いくら発想が素晴らしくても一緒には仕事したくないよなあ、といったネガティブな感覚。しかしそれと同時に、いくら一人ずば抜けたカリスマがいても、数万人という社員末端まで彼一人が把握出来る訳も無く、どうやってあのAppleの一体感を作り上げていたのか、とても謎だと感じていました。

読んだ後、実はジョブスの印象がだいぶ変わりました。
確かに彼はカリスマだし、人に対してとんでもなく冷たい振る舞いをします。しかし、ジョブスは慢心とは無縁の人間で、常に良い製品、良いサービス、良い体験を作り出すことだけに執念を持っていたこと、どこまでも偉そうだったわけでなく、他人の批判に傷ついたり、感極まって泣き出したりすることも多かった、というのは意外な事実でした。

そして、全編を通じて理解出来たのは、彼の周りにはイエスマンが集まったのではなく、才能のある人間が集まったということ。
だから側近でも、ジョブスと派手にやり合う。毎日、そういう日々を送れるタフさは必要ですが、ジョブス自身も自分と張り合えるような才能を持った人間しか引き上げない。
だから、イエスマンしか回りにいない独裁者には絶対ならないのです。
そしてそれが、Appleという会社の強さであるというのが、とても良く理解出来るようになったのです。

後半に何度も書いてあることだけれど、ジョブスは素晴らしい製品を作り出したことより、そういうものを作り出せる組織を作り上げたことに誇りを持っていました。Appleという会社自体が、ジョブスの最も偉大な作品であるのです。

伝記はあくまで伝記ですし、特にこの伝記はジョブスのいい点だけを書いている訳ではないのですが、いろいろな角度から教訓を得ることが出来ます。
組織で大きな仕事を成し遂げるために何が必要なのか、その一つの例が克明に描かれており、その内容は企業経営者だけが参考になる訳ではありません。むしろ集団で芸術作品を作る、といった人たちにもいろいろ示唆に富んだ内容となるのではないでしょうか。
この本,いろいろな読まれ方が可能ですが、それでも多くの人に読んでもらいたいと思います。日本的な価値観からはとことんかけ離れていますが、だからこそ日本人が読むことで得られることは多いのではないでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿