2009年4月10日金曜日

日本語を伝える-長音の発音

昨年のNコンの課題曲「手紙」の演奏をちょっと聴いたとき、冒頭の「拝啓」という言葉の扱いが大変気になりました。
「はいけー」と「け」のe母音をそのまま延ばした歌い方が、どうも今ひとつ日本語としてきれいな感じがしなかったのです。じゃあ、「はいけ」と最後を明確に「い」と歌えば良いかというともちろんそれもおかしい。
恐らく、最も自然な音色は「え」でも「い」でもない、その中間にあるのだと思います。いかに言葉の響きとして自然か、という観点で歌おうとするならば、もっと母音の音色を柔軟に、そして微妙に変化させる必要が出てきます。

日本語にはこういった長音が結構多くて、合唱をやっているとその扱いに迷うことが多々あります。
「えい」は「えー」なのか「えい」なのか、「おう」は「おー」なのか「おう」なのか。練習では、ついつい「え」にしましょう、とか「い」にしましょう、とか明確に決めてしまうことも多いですが、でも本当はどちらでも無いどこかに最も気持ちの良い発音があるはずです。
同じ母音が完全に続く時でさえ(例えば「かあさん」の「かあ」とか)、単純に同じ母音を延ばすより、少し母音の色を変えた方が言葉の輪郭が出る場合があると思います。

もちろん長音の歌い方に正解なんて無いのでしょうが、それでも発音がてんでバラバラというわけにもいきません。前に立つ人が何らかの方向性を示して、ある美的価値観の元で統一していく必要はあるでしょう。
歌い手一人一人も、どういう母音の色の変化が日本語の歌として自然なのか、もっともっと考えながら歌って欲しいのです。そのように意識を高めていくだけでも随分、伝わる日本語の演奏になっていくと思います。

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