無茶苦茶面白くて一気読みしてしまいました。作曲家を目指そうとしている人の夢を打ち砕き、商売敵を減らそうという目論見なのか、筆者が経験した悲惨な体験の数々を暴露する、というのがこの本の隠れた楽しみ方。名前は伏せてありますが、恐らくその筋では、簡単に誰だか分かってしまうに違いありません。少なくとも、合唱に関する話題では、誰でも知ってる某指揮者の名を思い浮かべたし。
最近はテレビでの露出も増え、アヤしい音楽家としての地位を確保しつつ青島氏でありますが、恐らく日本的な慣習に体質が合わない芸術家の典型なのかとも思います。虚栄で行動することの愚かしさを発言すればするほど、業界から干されてしまう(?)氏の体質には正直共感を覚えるところもあって、そういう目でこの本を読むととても興味深いです。
読んでみると青島氏は音楽史全般について非常に博学。しかも、その本質的なところをよく捉えているように思います。この本は、もちろん著者のぼやきだけでなくて、過去の作曲家の世知辛いエピソードもたくさん散りばめられています。崇高と思われている作曲家の神秘性を信じる人には、受け入れがたいかもしれません。(そういう人が、納豆ダイエットとかに騙されてしまうわけですけど)
実際のところ、氏のようなシニカルな視点は、一般社会の中では「ふざけている」というような反応をされることが多いと思います。それでも、社会に対する(小さな)問題を告発するために、私たちはもっと皮肉屋になるべきじゃないかと感じたりします。欧米って、そういうのってかなり辛辣ですし。
しかし、これだけの実績を持っている人なのに、どうしてそこまで自己卑下するのかなあって部分もあって、私など氏の足元にも及ばないのですが多少は反面教師とさせていただきたいと思います。
それにしても、こんな本さえ、「のだめブーム」の便乗本にしてしまうのは、講談社のしたたかさなんですね。
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