「となり町戦争」でデビュー&いきなり大ヒット&映画化、で一躍有名になった三崎亜記の長編第二弾を読みました。
やっぱり町か、と何となくネタの近さが気になりつつも、読んでみると、こりゃ思いっきりSFですね。30年に一度、町の消滅が起こる、という奇想天外な設定は、確かに前回の「戦争事業」という奇抜さに近いかもしれないけど、戦争が社会系に向かうのに対し、「町の消滅」は科学系に向かいます。
正直、私はSFに対してアンビバレンツな感情を持っており、大好きな小説もある反面、だからSFってやだなあ、と思うこともあったりします。今回はというと、非常に上質なSFで、私の中のSFのやなところが無いのがとても良かった、というのが率直な感想。
全体は、7つの章から構成され、それぞれが独立した小さなストーリーとなっています。したがって、物語としては一つなぎに連続に進んでいくわけではありません。
登場人物は限られているのですが、各章ごとに主人公が異なっていて、通して読むと、同じ人物が主人公になったり脇役になったりして、ちょっと違和感は感じました。ストーリーも全体としての起伏がないので、一般的な小説の読後の爽快感を感じるのは難しいでしょう。そういう意味で、決してこの本、万人受けしないと思います。
何が面白いって、この世界観の半端じゃないフィクション性。「月ヶ瀬町」といった地名が出るのに、舞台が「日本」であるとは決して書かれない。つまり、この地球上の話ではない、というくらい丹念に現実とのつながりを避けています。まるで、同時に文化が発展している別次元のパラレルワールドを描いているかのごとくです。
だから、この世界で聞かれる音楽や風俗も全て架空のもの。そういうのに徹底的にこだわり、架空の用語を造語していくセンスがまた鋭い。
もちろん、30年に一度町が消失する、というあり得ない設定を、小説内であたかも常識であるように書くためには、このような徹底的なフィクション化が必要だったということなのでしょう。こういうディテールの細かさには共感します。
ただ、過度なフィクションは読む者を困らせます。一つ一つが全くわけのわからない単語で、読み進めるのに難儀する場合もありました。このあたりは賛否のわかれるところかもしれません。
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