2027年の近未来を扱っているけど、全然SFじゃない映画。ちょっとSFノリを期待していくと外します。
設定は、2009年に人類に最後の子供が生まれて以来、一人も子供が生まれなくなってしまった世界。ロンドンに住むある男が、ひょんなことからテロリストに協力することになり、そこで妊娠した女性と出会って・・・、というように話は展開していきます。
しかし、そのようにあり得ない舞台設定でありながら、そこで見せ付けられる情景はあまりにリアルで救いようのない殺伐とした社会。テロリストや警官たちによる容赦ない暴力と殺戮の嵐。そして、その陰惨さは思わず目を背けたくなるほどです。これは、正直言って、R-15くらいに相当する暴力シーン、戦闘シーンに溢れていると思うのですが、全然そういう制限がないですね。
リアルな戦闘シーンは、そのままシリアスな雰囲気を映画に与えます。
主人公の元妻でテロリストの親玉である女や、主人公をかくまった良き知り合いである老人があっさり殺されてしまうあたり、悲しみというよりは、もうやり場のない怒りを感じるしかなく、その後の主人公の強烈な行動付けになっていきます。
そして、そんなあまりに陰惨な殺戮の嵐の中だからこそ、一人の妊婦が子供を生む、ということの神々しさが引き立ってきます。赤ちゃんの泣き声が、まるで世界の救いの声のごとく感じられるのです。
全体的に、かなり暗くて陰惨で救いようのない映画。しかし一方で、個々人の宗教観、倫理観、そして社会観を揺さぶる力を持った映画だと思いました。
途中で、キングクリムゾンの曲「クリムゾンキングの宮殿」がかかったのもちょっと嬉しかった。音楽はジョン・タヴナーも担当しているみたい。
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