2004年1月18日日曜日

嫌いな技術

様々な電気製品がマイコンで制御されるようになり、それに伴ってますますたくさんの機能が付くようになっています。
もちろん、マイコンが様々な制御をやってくれるということは、複雑な手順をボタン一つで順序どおりにやってくれるというような動作であったり、何十、何百通りもあるような方法を記憶してくれたりするような、まさにコンピュータが得意とする仕事を私たちのかわりに行ってくれるということです。
私自身も技術者の端くれとして、電気製品の機能を考えたり、実際に設計して実装したりする仕事をしているわけですが、その中でどうにも気に入らない機能、技術というのがあります。それは、機械自体が自分で考えてくれて、なんらかの処理を自動にしてくれるような機能です。それがほぼ決まりきった結論しかあり得ないような推論ならいいのですが、どうにも理解できない形で動作条件が変わるようなものは、どうも不備がありそうで自分にはいい印象を感じることが出来ません。

最近私が買ったものから具体例を挙げましょう。
昨年クルマを買いましたが、私の買ったカーナビ付きのクルマにはIT-NAVI SHIFTという機能がついています。これ、パンフレット読んでいたときから、上で言ったような機能の匂いを感じ、どうにも使う気になれませんでした。
どんな機能かというと、クルマにはエンジンやらミッションの制御にもかなりマイコン化が進んでいて、人間が操作しなくても勝手にスロットルを動作させたり、ギヤ比を変えたりすることが出来ます。実際、天候や現在速度などの条件によって、最も良い動作になるように設定されているはずですが、この動作がカーナビ情報とリンクすることによって、道路の状況によって勝手にギヤ比を変えてくれるというのが、このIT-NAVI SHIFTなのです。例えば、下り坂だと認識すれば、少しギヤ比を高くして、エンジンブレーキがかかるようになり、スピードが速くならないように制御するというのです。
こういう機能に、興味がある人も多いと思います。しかし、技術者な私としては、「もし○○だったら~」というフレーズがたくさん浮かんできて、逆にどうにも安心できなくなります。だって、走っていたら勝手にミッションのギヤ比が変わっていくんですよ。すごく怖くないですか。
思いつく限り上のフレーズを挙げてみると、前も談話でいいましたがカーナビの道路情報は必ずしも完璧ではありません。例えば、カーナビに書かれていない道路を走ったらどうなるのでしょう。あるいは工事で、道路勾配が地図情報と変わっていたらどうなるのでしょう。また、実際の道路で走らなければ気付かないような条件もあるのではないでしょうか。視界とか、混雑しやすさとか。
もちろん設計側は、安全サイドに振るように設計していると思いますが、だからこそ、動作するときとしないときの境界が使っている側に予測できなくなり、そこに恐怖感を感じてしまうのです。
クルマを買ってから、まず私はこのIT-NAVI SHIFT機能をオフにしてしまいました。

もう一つ、年末に流行りのHD+DVDレコーダを買いました。SONYのスゴ録というやつ。
知っている人も多いと思いますが、この中に「おまかせまる録」という機能があります。キーワードを入れておけば、レコーダが勝手にそのキーワードに適合すると思われる番組をサーチして、録画しておいてくれるというもの。
これ、結構多くの人が「この機能を使いたい」と言うのですが、どうも私としてはやはり気に入らないのです。この機能で番組をサーチする元になる情報はEPGによる番組情報なのですが(←EPGの電子番組表は超便利!!)、この情報には限られた文字しか書かれておらず、例えばタレント名を入れてからといって、必ずそのタレントが出ている番組を全て取ってくれるわけではないでしょう。もちろん、その程度のことは予期して使えば良いのでしょうが、そのぐらいのザル的な番組の集め方なら、本当に自分がみたいと思う番組をこの機能で見ようなどとは誰も思わなくなるのではないでしょうか。
実際マニュアルを読むと、いろいろと細かい動作条件が書いてあります。例えば、自分が録画予約した時間にまる録対象の番組があったら、自分が予約した番組が優先されます。また、HDの残量が少なくなると古いものから勝手に削除されていきます。その他にも怪しい条件がいくつかあって、こんなこと細かく気にするくらいなら、こんな機能使わなくてもいいと私は考えてしまいます。
少なくとも、勝手に録画してくれる機能が便利と思えるためには、予約番組が重なったときのことを心配しなくてもいいように、チューナが複数なければいけないと思います。また電子番組表の情報量ももう少し多くないといけないでしょう。
これだけの条件が揃わないと、何も気にせずに録画してくれるはずの機能が、この機能を使うがためにいろいろ気にしなくてはならないジレンマに陥ってしまうような気がするのです。

この、機械が自分で考えて自動に○○する、というのが本当の意味で信頼おけるものになるためには、もっともっと製品企画者が思う以上にたくさんの情報と、たくさんのリソースを必要とするように思います。上で紹介した機能も、将来的には当たり前になるのかもしれませんが、現状ではまだまだ動作に不信感を感じてしまうのは私だけでしょうか。

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