2008年5月6日火曜日

ラフマニノフ ある愛の調べ

ラフマニノフと彼に関わる女性を描いたロシア映画を見ました。
これまであまり馴染みのなかったラフマニノフという作曲家について、見終わったあと、かなり興味を抱くようになりました。何といっても、彼の作り出すメロディは美しい。生きている時代からすると、その作風の保守性ばかりが指摘されがちだけれど、後世に残るメロディを作れるというのはそれだけで類まれなる才能だと思えます。

内容としては、ラフマニノフを愛する妻のナターシャが、いかなるときもラフマニノフを支え続けたその献身的な姿を描いています。時には他の女性に心を移してしまうことさえ許しつつ、気が付けば彼女のところに戻って来ざるを得ない母のような包容力は、(男性から見れば)ある種理想の女性像なのかもしれません。
映画で表現されるラフマニノフは、恐らく実際とそう違わないのかもしれないけど、神経質で小心者で、それでいて喜怒哀楽が激しく、強い主張で周りを翻弄し、絶えず追い詰められた切迫感の中で生きているといった性格。こういったいかにも芸術家肌的な男性に、母性本能をくすぐられるという側面もあるのでしょう。しかしそれも献身的な愛を捧げる価値があるほど、彼の紡ぎだす芸術は神聖かつ比類ないものだという芸術至上主義があってこその行動です。
まあ、ラフマニノフは(後から見れば)十分スゴイ芸術家なので許されますが、売れもしない芸術家の才能を信じて一生を捧げるというのは、世間的感覚から言えばかなりリスキーで、もしそんな人がいるのならイタい女性と思われるのがオチかも。

ロシア映画ということもあり、20世紀初頭の雰囲気を出すのに昔の映像を使ったのは恐らく撮影が難しかったからでしょう。ハリウッドなら金かけてそういう映像を作っちゃうだろうし。また、アメリカ舞台でもみんなロシア語をしゃべっているとか、まあそういった辺りはそれほどシビアには作っていない感じもします。
その一方、師匠との決別とか、精神科医との交流とか、スタインウェイ社の商業主義への反発とか、史実をうまく織り込んであるのは伝記的映画として面白く見ることができます。
またラフマニノフの言動とか、一家のゴタゴタの描写とか、そういう人物描写は妙にリアルで、演技の良さもなかなかのもの。ラストもさりげない家庭の一コマなのに感動しました。

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