2007年8月28日火曜日

孤独の迷宮 FAQ

それほど Frequently でもないですが、ネタも含め、これまで尋ねられたことなどを紹介します。
・3小節目、40小節目はなぜ 9/8 なのか?それ以外は四分音符が一拍なのに。
曲全体は、もちろん四分音符が一拍となるような拍の感覚で作られています。
この二つの小節の冒頭に八分休符がありますが、そこで「ウッ」と突っかかる感じを出したかったのです。流れるようにその小節を過ぎ去るのでなく、固めに音符を歌い始めて欲しいと思いました。

・43小節の一拍目のアルトは、上も下も As の音ですよね?
上の41小節のテナーで、律儀に div.した両パートにナチュラルがついているので、不安になったものと思われます。確かに、その部分と整合性が取れていませんでした。もちろん As です。
タネを明かすと、元々 41小節のテナーも両方にナチュラルが付いてなかったのですが、合唱連盟とのやり取りの中で付けるように修正しました。その際、43小節のアルトのほうまで気が付きませんでした。(しかも、41小節アルトの楽譜ミスの遠因に・・・)

・mu nu lu ku du yu の mu と ku にスラーがついていますが、どのように歌えばよいですか?
このスラーは積極的にアーティキュレーションを指示したものではありません。同一シラブルを示すためのスラーです。したがって、特にこのスラーを直接的な表現に反映する必要はないと思います。
そういえば、以前スラーについて書いたことがあります。

・mu nu lu ku du yu の5拍子は3+2で良いですか?
四分音符が三つ、二分音符が一つなので、3+2で振るのが自然かと思います。

・長谷部さんは孤独ですか?
芸術家を目指すような者なら、孤独なくらいがちょうどいいのです。

2007年8月26日日曜日

プリマヴィスタ2を触ってみる

同じ合唱団で指揮をしているO氏が開発したPC用ソフト、プリマヴィスタ2が発売されます。
先日は(仕事で)軽井沢合唱フェスティバルに参加し、宣伝をしてきたようです。

その体験版がダウンロード出来るようなので、ちょっと触ってみました。ダウンロードはこちら
なるほど、合唱専用ということで、いろいろ工夫されていてGUI的に見栄えが良いですね。何といっても、コダーイシステムの移動ド表記が素晴らしい。自分で楽譜に書こうと思っても面倒ですが、自動で出てくれると嬉しいです。あと、全音や半音の違いだけにフォーカスして楽譜に表示される機能も、私的にはなかなかヒットです。楽譜上で音程が微妙に上下しているときに、半音か全音かって異名同音なんかもあって意外と識別しづらいことは良くありますよね。

もう一つ面白いのはレッスン機能。
譜例どおりに歌って、きちんんと正しい音程で歌っているか判断してくれる「視唱トレーニング機能」は、なかなか良いのではと思います。これで練習すれば、音程の悪いところ、取れないところを認識できるきっかけになることでしょう。
ちなみに体験版では28例ありますが、これが100以上になると、やりがいがあるんじゃないでしょうか。練習用コンテンツをもっと増やすと本当にこれでレッスンできるような気がします。
もう一つの音程トレーニングですが、これはちょっと難しい。これ、簡単に出来る人はほとんどいないような気がします。もちろん、これでトレーニングしたらかなり移動ドの力がつくとは思いますが・・・

恐らくこのソフトの一番のキモは、練習している曲のデータがあるかないか、ということでしょう。今練習している曲がデータとしてあると、あとはスクロールする楽譜に合わせて歌を歌って音が取れているか確認できます。
しかし、楽譜はスコアメーカーという別のソフトがないと作れないし(簡易的なスコアなら作れるようですが)、音取りするために楽譜データを作る、というのはちょっと非効率で現実的ではありません。
せっかくカワイはたくさんの楽譜商品を持っているのだから、それらをどんどんスコアメーカーフォーマットにして、公開するか安く販売するなどすれば、このソフトの有用性が上がると思います。
このソフトの力を十分に生かすには、コンテンツの充実が鍵ではないか、という気がします。

あと、微妙に不満なところ
・ピッチグラフの横軸のスケールがいじれない。
・ピッチグラフも点ではなく線で表して欲しい。
・視唱トレーニングは全音符だといまいち歌いづらい。
・ピッチ検出できなかったとき、データが途切れてしまうのでなく、表示に前のデータを使うなどして工夫すると、もう少し見やすくなるような気がする。
→リアルタイム性にこだわらなければ、もう少し精度の高いピッチ検出が出来るかも。

2007年8月23日木曜日

G4「孤独の迷宮」について

そろそろ各地でコンクールが開催されているようです。
予想通りというべきか、G4を選んでくれた団体はかなり少なそうで、作曲者としては残念な気持ち。例年、公募作品を選択してくれていたO久保混声も、今年は違う曲だとか。

その中で、意外にも G4 は高校の団体で取り上げられているような感じです。各地の高校生、先生がたよりメールを頂いたりしています。未だに一般団体で取り上げてくれる団体を聞いたことがないのだけど、高校だけならもう6~7校くらいは耳に入ってきています。
先日は、浜松市内の某高校でG4を演奏してくれるというので、練習にお邪魔してまいりました。確かにこの曲の音取りは難しいし、若干音がアヤしい部分はあったのですが、毎日のように練習して良く練られてくると、なかなか面白い音響が楽しめるのですね。こんなに一生懸命練習してくれて、きっちりした音楽を作っていただいて本当に嬉しく思いました。

そういう意味では、練習時間が必ずしも多くない一般団体が、この曲を敬遠する気持ちはそれなりに良く分かります。人生経験だけじゃ、カバーしきれないんでしょうね。どちらかというと、まっさらな気持ちと莫大な練習時間を要求する音楽なんでしょう。

良く質問されることなど、また近いうちに紹介いたします。

2007年8月20日月曜日

呪怨 パンデミック

浜北にサンストリートというモール街が出来て、その中に東宝シネマズが入りました。
浜松にも東宝シネマズがあるのに、ほぼ同じ都市圏内にもう一つ東宝シネマズが出来るというのは、思わずその出店戦略を考えてしまいます(浜北だって、もう浜松市になっちゃったし)。良く解釈すれば、上映作品をうまく散らばせて、浜松近辺全体で市場そのものを拡げよう、つまり映画人口そのものを増やそう、と考えているとも思えますが、さてどうでしょう。
しかし、実際オープン間もない日曜の昼という、これ以上無い良い条件と考えられるにもかかわらず、お客がそれほど多いとも思えなかったです。ちょっと先行き心配。

というわけで、サンストリート浜北の東宝シネマズで「呪怨」を見てきました。お客は10人強。さらに心配・・・。
「呪怨」はハリウッドでシリーズ化され、今回もハリウッド製ながら清水崇監督、というアメリカでのジャパニーズホラーブーム(?)を象徴するような映画です。
正直言うと、ひたすら脅かしの連続に、あまり品の良さを感ぜず。雰囲気もだんだんリングっぽくなってきて、ネタの枯渇が心配されました。なぜか上映は日本語吹き替えのみだったのですが、一番酷かったのは、その吹き替え。超棒読み。これはちょっとマズイでしょう、という感じ。
後で某女性漫才師だとわかりましたが、声優なんて誰でも出来るってわけじゃないでしょう。

2007年8月12日日曜日

合唱で使う音を作る-メトロノーム

音楽の練習といえば、やはりメトロノーム。これをシンセで作ってみましょう。

と言っても、メトロノームから出てくる音色を作っただけでは意味がありません。メトロノームは、テンポ通りに音を出してくれるからこそ意味があります。
その機能をシンセで実現するのに最適な方法があります。シンセに詳しい方ならご存知と思いますが、最近のシンセにはアルペジエータという機能がだいたいついています。
例えば「ドミソ」と和音で鍵盤を押すと、「ド→ミ→ソ→ド→ミ→ソ→・・・」と楽器が勝手にアルペジオにしてくれるのです。実演奏で使うには少々、余計なお世話にも思える機能ですが、メトロノームには最適。

というわけで、早速作ってみました。
まず、音を二つ作ります。一つは小節の一拍目に使う「チーン」といった鐘のような音。Aのピッチにしました。
もう一つは、一拍目以外の音に使う音。ノイズにレゾナンスを効かせて木魚のような音にしました。
そして、この二つの音をスプリット設定で、一つのプログラムにします。(要するに一つの音色だけど、鍵盤の位置によって音色が変わるようにする)
「チーン」の音を最高音のドの音でのみ鳴るようにしました。そして、その上でアルペジエータ機能をON、押した鍵盤を覚えたままにするラッチ機能もONにして、出来上がり。

使い方は簡単。一番上の鍵盤から同時に4つの鍵盤を押すと、4拍子のカウントになり、3つ鍵盤を押すと、3拍子になります。テンポは楽器についているテンポつまみを回せば簡単に変更できます。

2007年8月10日金曜日

合唱は芸能だ

先週末に、浜松アクトシティ大ホールで開催された浜松世界青少年合唱祭を見に行ってきました。5日のメインコンサートは10時から18時までのマラソンコンサート。結局、ほとんど全部見てしまいました。
ちなみに、前回の感想はこちら

全14団体の演奏がありましたが、面白かったのは次の3つ。
・プエリ・カントレス・オリヴェンセス(ポーランド)
青少年の合唱祭なのに、なぜか男声には頭のはげたオヤジが・・・。いや、それが面白かったのでは無くて、演奏した曲が面白かったのです。2曲はカール・ジェンキンスのレクイエムから。これを選ぶとはなかなかしぶい。
しかし何より可笑しかったのが、最後の曲。これ、一切ハモリ無しの現代曲というか、パフォーマンス。みんなが叫んだり、指揮者がいきなり怒り出したり、全員がふざけ始めたり。圧巻なのは、まるでビデオでポーズボタンを押したかのような、全員の静止芸。大爆笑でした。

・名古屋少年少女合唱団
指揮者は全国大会でトヨタを振っている水谷さん。
しかし、ここは完全に、徹底的に、芸能の世界を極めようとしています。踊りと太鼓、手拍子、足拍子と、歌以外の要素だけでもう十分に楽しめます。
正直言って、この団には踊りあるいは演出のプロがいると思いました。これだけの少年少女の団員が、乱れなく(しかも本当に楽しそうに)舞台上でパフォーマンスを繰り広げるには、相当の練習が必要だったはずだし、それをきっちりと統率した演出家がいたことが想像されます。
ウチでもやっている「狩俣ぬくいちゃ」など、恐らく楽譜まで手を入れていたと思われます。(要するに、あるものが無かったり、無いものがあったり・・・)

・ノルウェー少女合唱団
この合唱団が演奏した曲は、この日演奏するために委嘱された現代曲。それも筋金入りの。
現代曲といっても、邦人作曲家が書くような意味不明なカオス的音響ではありません。いきなり「ギャー」とか叫びながら、少女たちが舞台上を走り回るところから曲は始まります。それが過ぎると、朗読+和声のない音響、の連続。朗読は英語だったようですが、残念ながら意味が分かるほど聞き取れず。
ただ、全員が白装束だったり、プリミティブな表現が多かったことを考えると、何かしら文明批判的な主張を持った曲なのかもしれません。見事に歌いきった、もとい、演じきった女の子たちに拍手!

もはや、合唱は芸能なのかもしれません。

2007年8月4日土曜日

合唱で使う音を作る-音取り用

シンセを使って最初に作ろうと思った音は、合唱の練習や本番で使う音取り用の音。これまでも、練習では音取り用の音にいろいろ不満があったので、それなら自分で作ってしまおう、ということで色々考えてみました。

私のこれまでの合唱経験より、音取りに都合のよさそうな音の要素を挙げてみましょう。
・音が真っ直ぐであること
 まあ、簡単にいえば、音程、音量、音色が鍵盤を押してから離すまで一定であること。こういった音は、あまりに機械的に聞こえてしまうので、実際の電子楽器に音色として載ることはほとんど有り得ません。
・ピッチが揺れないこと
 音取り用なので当たり前ですが、ピッチパイプなんて吹く強さでピッチが変わってしまいます。
・音が減衰しないこと
 ピアノで音取りをやる場合、音が減衰してしまうのが難点でした。
・和音で濁らないこと 
 派手な音だと複数の鍵盤を押しただけで音が濁ってしまい、和音感を感じることが難しくなってしまいます。音色的には近接する高次倍音の量は少ないほうが良さそうです。
・歌いながら一緒に弾いても音が聞こえること
 これは実は上と矛盾するのだけど、合唱の音にマスキングされないような周波数成分も持つ必要があると思われます。

まだ実戦で試していないけど、一つ音を作ってみました。もういかにも電子音という感じなので、評判は良くないかもしれませんが・・・

2007年8月1日水曜日

シンセといえば冨田勲

以前もこんな談話を書いていましたっけ。
シンセサイザーの話をするとすっかり昔話になってしまうのだけど、でもやっぱり冨田勲は素晴らしい、と私は言いたい。
彼はシンセサイザーという機械を、もっともクリエイティヴに使いこなした音楽家の一人だと思います。もっとも、基本的に音楽そのものは氏のオリジナルでなく、近代のクラシック曲のアレンジなのだけど、音楽が表現したいことを的確に捉えた上でデフォルメし、あるいは、全く新しい音楽への息吹の与え方を示した、という意味で、本当に独創的な音楽家だと言えるでしょう。
まあ、いくら言葉で言っても、これは聴いてみないことには理解してもらえないかもしれませんね。「月の光」「展覧会の絵」「惑星」など原曲も有名なモノも多いので、未聴の方はぜひ聴いてみてください。部屋を暗くして聞くと、その幻想的な雰囲気に圧倒されます。

実際、自分でいろいろシンセをいじっていると、作っているうちに何やっているんだかわからなくなることもしばしば。あらためて冨田勲を聞いていると、あれだけ多種多様な音を作り出し、それをライブラリ化していることだけで驚きです。
もちろん、冨田勲と言えばこの音、というトレードマークのような音もたくさんあります。なかでも、「ゴリウォーグのケークウォーク」の人の声のような音は印象深いですね(「惑星」での宇宙飛行士の声にも使われている)。

冨田勲は、同じく理系的な音楽家として、大いに共感し、そして尊敬すべき芸術家なのです。