かなり渋い小説なんだけど、よくよく考えてみると、金と酒と女まみれの堕落した男の話。それでも、格調高い文体や文章の端々に現れる博学な引用に、ただただ眩暈を感じてしまいます。1930年代のヨーロッパを舞台にした話で、いろいろな街の雰囲気や、退廃的な風情がとてもよく伝わってきます。そういった、文章の巧さ、比喩や表現の巧さだけで読めてしまう、そういった感じの小説なのです。
第3回ファンタジーノベル大賞受賞作品。もちろん、ファンタジー要素はあります。主人公は一つの肉体に二人の精神が宿ってしまっているという設定。それでも、これがSF的、ホラー的にならないのは、超常現象であるにも関わらず、主人公や登場人物がいとも簡単にこの状況を受け入れてしまうという作品設定の妙があるわけです。だから、ファンタジーというよりも、単なる退廃的なある男の冒険談として読めてしまう。
こういったデカダン的な身の崩し方に憧れる人もいると思います。そんな方にはお奨めです。
0 件のコメント:
コメントを投稿