2004年3月14日日曜日

MIDIを使う -コンピュータは合唱団になれるか-

映画の世界ではCG(コンピュータグラフィックス)がもう一般的になり、SFなどで実写ではあり得ないような映像を作ることが出来るようになりました。ここ10年くらいのCGの進歩は凄まじく、今では素人ではわからないほど、実写のクオリティに近づいているような気がします。俳優はブルーバックのスクリーンの前で演技をするだけ。あとはCGの映像と合体させれば、その場面は完成です。まさに映画作りそのものがバーチャルで完結できるシステムです。

音楽の場合、これまでも言ったようにMIDIのおかげで、早くから人が演奏しなくても音楽が作れる環境が出来ていました。
それに加え、最近はハードディスク内に波形を溜め込んでおき、そこから直接音を出せるようになりました。そのおかげで、大量に波形をコンピュータ内にストックすることが出来るようになり、リアルにサンプリングした音源を使えば、生と違いがわからないくらいのクオリティの音楽製作は可能になっています。
一番難しいと思われるオーケストラサウンドでさえ、各楽器のいろいろな音域、奏法、強弱ごとのサンプリングをしたデータが販売されており(かなり高額なもので素人には手が届きませんが)、これを使えば本物のオーケストラと区別がつかないほどのサウンドを作り出すことが出来ます。実際のところ、最近は映画音楽などでも、本物のオーケストラを使ってないケースも増えているのではないでしょうか。

音楽において、バーチャル化が適用できなかった最後の砦が人間の声です。こればかりは人を集めて、歌わせるしか方法がありませんでした。
ところが、ついに人間の声についても、かなりのクオリティで自動に作れるようになってきています。既にご存知のかたもいるかもしれませんが、ヤマハが発表したVOCALOID(ボーカロイド)がその技術を利用した製品です。
上のページで直接、内容を見てもらえば良いのですが、簡単に内容を紹介すると、MIDIのような楽音情報に加え歌詞情報を与えることによって、実際に歌っている声を自動生成するというソフトなのです。
ここで出てくる声は、歌声ライブラリというデータベースによって変えることが出来ます。この歌声ライブラリとは、例えばある歌手にいくつかのフレーズを歌ってもらって、その中の子音、母音、歌い口などの情報を切り取りデータベース化したものです。ボーカロイドはこのデータベースを元に、音程と歌詞情報から全く別の歌を生成していきます。
ちなみに、これはヤマハの製品として世の中に出されるわけではありません。上で言ったデータベースを作ってくれる他社にライセンスを供与する形になります。従って、実製品はそれぞれの歌声ライブラリを作るメーカから出されることになります。

私も仕事柄、何度か実際の音を聞いたことがあります。(上記のページでもサンプル音を聞くことが出来ます)
もちろん、本物の歌声と区別がつかないほど完璧というわけではありません。特定子音が奇妙に聞こえたり、シラブルの繋がりがおかしかったり、やはり時々電子的な音に聞こえたりします。しかし、従来の電子的に合成された声のような、一本調子な感じとか、奇妙な電子的な感じではありません。うまくピンポイントで使えば、何気なしに音楽を聞いたならコンピュータで合成された音とは気が付かないレベルまで達していると思います。

これを何に使うかは、むしろアーティスト次第です。ボーカルはアーティストらしさの最も基本的な部分ですから、メインボーカルを差し替えるようなことはまれだと思いますが、例えば、実際の音楽製作の現場で、バックコーラスを雇うよりボーカロイドの品質で十分と判断できれば、こちらのほうが制作費が安く上がります。恐らく、そういった現実的なシチュエーションで使われることが多いと思います。
もちろん、この声自体をフューチャーした現代音楽的、実験音楽的な利用もあるでしょう。
まだ歌声ライブラリの数は少ないですが、音楽製作のコストダウンのために使われるのなら、合唱団の歌声ライブラリもいずれ作られると思います。そうなると、パソコン上で、実際に歌ってくれる合唱の打ち込みも可能になります。
実際、合唱の音源って、選曲のための参考資料に使いたい場合がほとんどで、ある程度曲の雰囲気が分かればいいのならボーカロイドで作っちゃえばいいじゃない、という選択肢も十分ありえます。
さて、誰かこの商売してみませんか?(選曲資料用邦人合唱曲シリーズとか^^;)

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