サービスや製品の変動費がゼロに近く社会が訪れ、いずれ企業は儲けが出せなくなり、資本主義が終焉を迎えるという話。
その時代には協働型コモンズが台頭し、その仕組みが世界の新しい秩序になっていくだろうと予言されています。
とはいえ、私たちはあまりにお金で暮らす世界に慣れ過ぎていて、儲けが必要のない社会というものが想像できません。
お金が無ければ生活できない今の時代において、お金をどれだけ儲けるかが労働の最大の関心であり、企業活動の最大の目的となるわけで、お金に変わる価値とその価値交換の仕組みが想像できない以上、私たちは全てを金銭的価値に換算するしかありません。
そのことをずっと考えているのだけれど、今のところ、まだ私には糸口も掴めない。
例えば、限界費用がゼロになるのなら、身の回りのものがどんどん安くなるはず。確かに実際に安くなっているものもあるけれど、家を建てれば相当なお金が必要になるし、教育だって、医療費だって、今よりも未来の方が安くなって楽になっていくだろうとは誰も思っていません。
むしろ、必要な人件費を誰も払えなくなり、供給側も先細り、結果、人々も必要な製品やサービスを受益できなくなる不安に皆が怯えているようにも思えます。
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しかし、最近ちょっとだけ何が変化のきっかけになるかが見えてきたような気がしているのです。
簡単にいえば、「寄付」が次世代の新たな取引形態として中心になるのではというアイデアです。寄付といっても、もう少し広義のもので、今の時代に法的に定められたものとは少し違うかもしれません。
もう少し、いまどきの流行りでいうとクラウドファンディングのような経済です。
なんだ今さら、と言われそうですが、確かに私もそこまで重要なものになるとは思ってませんでした。
というか、現状クラウドファンディングもいまいち広がってない感じもしますね。
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なぜ製造業が大変かというと、製造施設を建設し設備を整え、試行錯誤しながら商品開発を行って、それらをある程度の数だけ販売して始めて投資の元が取れるわけで、この初期のハードルが非常に高いからなわけです。
しかし、ここ数年、このハードルを低くするための仕組みがどんどん現れています。
まずそもそも自分で工場は持たず、汎用性のある設計をすればファブレスでも他の工場でものは作ることができます。(と言っても多くのスタートアップはここでこけているわけですが)
商品開発も、3DプリンタやIoT機器、Web・スマホとの連携、汎用部品の広がりなどでゼロから考えなくても、多くのオープンソースの助けでラピッドプロトタイピングができるようになりました。
そして、必要な投資は借金や投資家の助けを得るのではなく、クラウドファンディングという名の寄付によって行うわけです。
これら一つ一つの流れがさらに加速すればするほど、製造業の起業のハードルは下がっていくことでしょう。
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で、限界費用ゼロ社会での新しい経済システムとして、寄付型の資金調達がどのように絡んでくるのでしょう。
このような時代に人々が購入する消費財というのは、限界費用が下がることでますます安くなるのですが、ものによってはそれがあるところで踏みとどまるのではないでしょうか。
消費する行為自体が自己表現であり、人と違っていたとしても自分が本当に気に入った製品が欲しい、という流れがさらに強まるのではと思います。
もう少し具体的にいえば、消費財の売り手が大量に増え、その結果、世界中に数え切れないほどの種類の製品が生まれるような現象が起きます。
極端にいえば、自分の欲しい商品をオーダーメイドで作ってくれる業者さえ現れるでしょう。
例えば、テレビを新規に買うとします。
置く場所のサイズや位置が決まっているので、縦横、奥行きを全て計測して、ぴったりのサイズが嬉しいし、リモコンのタイプ、音響システム、録画システムやネットとの接続、場合によっては好みのOSの選択、という要素もあるかもしれません。
そういった商品はちょっと値段は高めかもしれませんが、世界に一つだけのオリジナルな商品となります。そのような一対一の関係であれば、商品にお金を払うというより、彼らの仕事に対して寄付をする、という考えのほうがむしろ気持ちにしっくりきます。
作る側も、モノを売って儲けるのではなく、定期的に寄付してもらうほうが収入が安定して嬉しいし、自分のファンの人たちへの濃密なアフターサービスも可能になります。
オーダーメイドであっても一台ごとの経費を計算しなくて済み、常に自分の活動全体の収支を考えればそれで十分です。
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あー、やっぱりうまくまとめられない。
製造業は寄付型、サービス業はサブスクリプション型、そして大企業はBtoBに移行し、部品開発、流通、量産といった業態になるというのが私の意見。
それをもう少しうまくまとめられればいいのだけれど。