以前、「フェルマーの最終定理」がとても面白くて、それ以来サイモン・シンというライターは気になっていたのです。
今回の題材はずばり宇宙。それもビッグバンです。(というか、オリジナルタイトルはそのまま"Big Bang"なようです。)
上下巻二冊となかなかヘビーな量ですが、中身が面白くて飽きさせることがありません。
サイモン・シンの書き方の何が面白いかと言うと、一つには理論とともに、それを考え出した人間に注目を当てるという点。新しい登場人物があれば必ず生い立ちを説明するし、その人間性を示すような重要なエピソードを紹介するのです。
それは取って付けたような内容でなくて、なぜ彼らがそのような主張をするに至ったか、という点と密接に結び付けられていて、科学者の伝記とその科学理論が同じ文脈の中にきれいにまとめられています。
もう一つサイモン・シンのすごいところは、どんな最先端の理論であっても、そのエッセンスをうまく救い上げ、誰にでも理解しやすく説明し、その理論の科学史的、社会的な意味をきちんと記述してあること。
それだけで超難解な理論も、ものすごく人間くさい、身近な存在に感じられるから不思議です。学会内での論争もその場の臨場感をちゃんと伝えていて、いささか幼稚な学者同士の小競り合いも余すところ無く紹介してくれます。科学者を決して安易に聖人君子に祭り上げません。
ということで今回はビッグバンなのです。
話はギリシャから始まります。この宇宙の仕組みはどうなっているのか、最初に科学的に論じたのはギリシャの自然哲学者たち。そのとき確立された天動説はその後2000年近くも信じられることになったのです。
コペルニクス、ケプラー、ガリレオとお馴染みの科学者の尽力でようやく人々は地動説を信じるようになります。
その次はアインシュタイン。一般相対性理論で重力の本質がわかり始めると、なぜ宇宙は重量でひと塊にならないのか、という疑問が生じてきたのです。重力と反対の力が何かあるのでは、という疑問が出てきます。
それから宇宙を観測するための巨大望遠鏡に大きな貢献を成した人たち、各天文台で重要な観測を人たちがたくさん紹介されつつ、その結果の積み重ねが銀河や宇宙のサイズなどを次々明かしていきます。
そして宇宙が膨張しているのでは、という観測結果から、ビッグバンという考えが浮上します。それにまつわるたくさんの理論と論争、そしてそれを裏付けるための観測。今でもビッグバンを否定している学者もいますが、そうした積み重ねの結果、現在ではビッグバンが宇宙論の基本的な理論となりつつあるところまでが語られます。
科学好き、理系人間の方にはサイモン・シンの著書はおススメです。
こんにちは、東北大のtateです。先日はヴォア・ヴェールの見学をさせていただき、ありがとうございました。
返信削除サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』は、高校時代に読んだことがあります。堅苦しくなく、文系の私でも興味深く読みとおすことができました。今回の本も、ぜひ読んでみたいですね。
tateさん、こちらにも来て頂きありがとう。
返信削除「フェルマーの最終定理」を読んだとは、なかなかの強者ですね。
私の場合、ハマるとどんどん追い求めてしまうタチで、つい先ほどサイモンシンの「暗号解読」を注文してしまいました。読む暇あるかな。